学校に通うための学費・学生生活をサポートするための借金ですから、これを踏み倒すようでは次の世代が奨学金を受けるべき仕組みが破綻してしまいます。
チェックポイント
奨学金の返済期日を過ぎた!起きる不利益とトラブル
奨学金の返済をしないことは、決していいことではないと頭の中ではわかっているはず。
低金利で借りていることからも、世間一般的な貸金業者から借り入れすることよリも返済しやすい条件であるのですが、どこからお金を借りても、債務者と債権者の関係に変わりません。
延滞金
- 奨学金の場合は1日ごと掛かるものでなく、半年に2.5%、年利5%が掛かる。
- 延滞時の返還では、まず利息に充てられることにより、返済額が少額だと元金が減らないことが予測される。
- 延滞据置猶予を利用して、延滞が発生した時点でも返還期限の猶予を願い出ることも可能。
ブラックリスト
- 信用情報機関は貸金業者が加盟するものですが、奨学金を貸し出す日本学生支援機構も加盟しているので、延滞することで事故履歴が掲載される。
- 消費者金融で延滞した時と同じ扱いですので、ブラックリストとなれば、その後の信用情報機関を用いる審査に影響がある。
- たとえ延滞金・元本を完済したとしても、履歴として向こう5年間は残る。
債権回収・支払督促
- 延滞が長引き、債権者から直接通知が来ていたものが、日本学生支援機構より委任された第三者、債権回収会社による督促をされる。
- 債権者が簡易裁判所に支払督促の手続きをし、裁判所を通じて請求されるので、放置すれば強制執行されることに。
- 支払督促は訴訟に至る前の段階なので、支払いができるのに支払っていないのであれば、早く返還に応じるべきですし、前述した延滞据置猶予を利用することも選択肢のひとつ。
訴訟
- 裁判所でお互いの主張を公的に争うものであるが、債務不履行であることは明らかであり、「返せるのに返さない」は通用しない。
- 奨学金を借りたものの、なんらかの主張があれば当然に主張することはできる。ただ、裁判を放置してしまうと相手側に有利な確定判決となるので、真摯に応じるべき。
- 奨学金も債務整理のひとつ。自分一人で手に負えないのであれば、潔く専門家に相談する。
奨学金で困ったら、日本学生支援機構の救済制度を確認する
経緯や今後の返還計画について、書面で明文化することにより、債権者からの譲歩を得る交渉であると理解してください。
返還期限猶予
- 現在在学中。
- 怪我・疾病により、仕事をすることについてドクターストップがかかっている。
- 失業中・生活保護受給中で経済的に難しい。
- 産前産後・育児休業である。
返還期限猶予の詳しい手続きを希望される方は、公式サイトよりどうぞ。
減額返還
- 割賦金が減額されることで、返還期限が延長されるもの。返還額の総額が減ることは無い。
- 年一回の申し出によって、12ヶ月間の延長が可能。最長で15年間(180ヶ月)まで引き伸ばせることができる。
- 平成29年度以降、第1種に限り、所得連動型返還方式という課税対象所得の9%を返還するという制度も生まれている。
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返還免除
- 奨学金を借りていた本人が死亡した時。
- 精神および肉体的な障害を原因として、労働能力が失われた時。
- 上記の理由で、治癒の見込みがあれば猶予へ。医師の診断書を要するなど、超例外的措置と考える。
また、すでに受診している医療機関からの診断書だけでなく、日本学生支援機構が独自で定める等級の中で、日本学生支援機構の嘱託医による判断で免除の適用が決まります。
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奨学金は債務整理することができる
奨学金の申し込み時に、公益財団法人日本国際教育支援協会が、機関保証という、奨学金が返還できなくなった時に支払いをするという仕組みを選択しませんでしたか?
奨学金の債務整理を検討する上で、上記を把握することは非常に大切です。
「機関保証と人的保証」
- 機関保証
- 人的保証
保証人・連帯保証人を立てることなく奨学金を受け取る仕組みで、毎月の奨学金から保証料が天引きされて支給されます。
もし返還が滞った場合には、保証期間が奨学生に代わって代位弁済してくれます。
しかし、保証機関が債権者、奨学生が債務者という金銭債権が発生し、保証機関は奨学生に対して代位弁済したお金を請求することに。
保証人・連帯保証人を立てて奨学金を受け取る仕組みです。
返還が滞った場合、債権者である日本学生支援機構は、保証人・連帯保証人に対して返還を請求することに。
保証人・連帯保証人は奨学生に対して弁済を請求することもできるが、奨学生だけでなく、保証人・連帯保証人にも弁済できる資力がなければ、両者ともに債務整理を検討する必要があります。
必ずしも債権者が応じるとは限らないわけですが、そもそも日本学生支援機構では救済制度の用意があります。
救済制度を利用せずに債務整理をするのであれば、個人再生・自己破産、もしくは異議申立のように、裁判所を介して法的な救済を求めること最終手段と言えます。
異議申立とは、督促に対して反対・異議があることを裁判所で争う手続きのことで、認められることで返済条件の緩和に応じる可能性もありますが、いずれにしても専門家である司法書士事務所・弁護士事務所へ相談することがオススメです。
いま現在の経済状況を明らかにし、奨学金の返済が困難であることを証明する必要がありますが、これも貸金業者を相手にする手続きと同じであり、奨学金だからといって特殊な方法があるわけではありません。

